WOM ミニフォーラム Part 3 

アイルランド人男性と語る日本のSOHO事情


Mr. Fletcher

フレッチャーさんの横顔

アイルランド出身。10年前に1年ほどのつもりで来日。
現在は、自宅でゴルフ関連の仕事を行っている。ゴルフの腕はプロ級。2児の父。
この日、フォーラムが始まる前に、会場の隣室でVCOM運営委員長の金子郁容氏がプレス の取材をうけていたため、フォーラムの参加者は静かに取材の終了を待つことになった。
「小さいときのアイルランドの日曜日の教会に行っているとき、みんな静かだったんで、 そういう思い出がでてきました。」と、フレッチャーさん。



第2部 SOHOのメリット、デメリット

Q お話をお伺いしていると、在宅で働くには自己管理がきちんとできないといけないというのが分かります。ご自分で仕事をしていると、結構裁量の余地があるのではないかと思うのですが、多少はルーズに、「今日はちょっと休みたいから1日くらい遅れても…」とはいきませんか?

あ、それはダメです。いい結果を出さないといけない仕事ですから、今日の試合の記事は、 今日の記事として出したい。
インターネットの「タイムリー」は、雑誌の感覚とも違います。競合するページがありますか ら、早い方が勝ち。一瞬でも早ければ、お客さんが見に来ますから。

Q 厳しいですね。自分の仕事の結果がすぐお金になるというのは、逆にサボったらいい 結果にならない。仕事の中身はハードだと思います。情熱を持ってやれること、「お金を もらわなくても構わない」というくらい好きなことでないと、長続きしないんじゃないで しょうか。
サラリーマンだと、一応会社に顔を出していればお金が入ってきます。会社勤めの場合、 今日はいやだなーと思ったら、有給休暇を取って1日休んでリフレッシュできます。在宅 で仕事をする場合、今日はいやだなーと思ってはダメなんでしょうね。

いや、いやだなーという時もありますよ。でも、嫌な時でも選手から電話がかかってくる と、例えばどこかの会場の選手の内容を教えてくれたりとか、必ず楽しいことがあります。
それに会社勤めだと、9時までに会社に行かなければなりません。通勤が一番辛いです。 自分の会社を作る前に、吉祥寺のゴルフスクールでマネジャーをしていました。当時、調 布に住んでいて、京王線で通勤していました。毎晩、帰りが大変。たった15分しかなか ったけれども、辛かった。

自由が丘に住んでいた頃は、東京駅へ出るのに大井町駅で乗り換えていました。大井町駅 で京浜東北線を待つのですが、朝8時30分ごろ隣におじさんが立っていました。多分60 歳くらいで、あと2ヶ月くらいで退職しますという風情の。彼はこの40年間、毎朝この 狭い所で過ごしてきたと考えると…。あれは凄く辛いです。いやなんです。東京は人が多 すぎる。海外だったらマイカー通勤ができるけれど、日本の会社には駐車場がない。道も 込んでいるから電車に乗るしかない。日本に住んでいる外国人の友達には、自宅で働いて いる人が私の他にもいます。

日本では、9時から5時までの普通の会社勤めはしたことがありません。
日本の会社は、毎日残業をやらなければいけない。会社に残らなければならない。何をや っているかというと何もやっていない。僕が先に帰ると言えない雰囲気なのでみんな最後 までいないといけない。私から見たら、ちょっとおかしいですね。仕事をちゃんとやって 結果をだせば帰っていいじゃないですか?それに、有給休暇を使わないですね。何で使わ ないんでしょう?休んだら困りますと、上から言われちゃいますから。

アイルランドでも、家で仕事をやっている人は少ないです。日本と同じように9時5時の 仕事が多いです。でも環境が違います。アイルランドでしたら、たとえば日曜日の午前中 ゴルフが出来て、1時に家に帰ってきて食事して、午後は、家族の活動を一緒に出来る。 日本では、旦那が日曜日ゴルフに行ったら一日いないんですね。

向こうは土日は必ず休みですね。日本では、土日が休みでも会社に行く人たちはいます。 必ず向こうは逆、有休も全部使います。一日休みが残っていれば仕事に関係なく休む。
向こうの考え方は、会社の社員になるという契約をします。この仕事をやる代わりに、報 酬や休みをもらう。自分の方も一生懸命やっていますから、会社もお金だけでなく契約分 の休みも全部払って欲しいと考える。

私、今は有給休暇がないんですけど…。今の仕事は、休みが取りづらいです。お正月にア イルランドに帰省して、1月10日に日本に帰ってきましたが、それから1日も休んでない ですね。1番少ない日でも、1時間は仕事をしてますから。その代わり、明日から北海道 で、仕事をしながらだけど、家族とスキーをします。普通の会社勤めだったら、有給が何 日間しかないとか、お盆や正月やゴールデンウイークなどを利用しても、かなり短い期間 しか旅行に行けない。
1日に少しずつ仕事をならなければいけないけれども、東京に居るのと比べて、毎日子供 と過ごす時間が長くとれる。長い関係が作れるというメリットが私にもあります。

Q 今、お子さんの話が出ましたが、フレッチャーさんが在宅で働いていることは、家族 にとってはどうなのでしょうか?フレッチャーさんの奥様は、自宅のあるビルの1階でお 店を経営なさっています。お2人共、職住が近い所で、まったく別々に仕事をなさってい るのですが、その点はどうですか?

夫婦の仕事は分けた方がいいですね。店の商品のことは、私は知りません。
彼女も仕事を好きでやっていますから、それは良いことだと思います。お店は、営業時間 が11時から7時までと決まっています。私は、夜遅くまで仕事をしたり、出張が多かっ たりするんですけど、彼女の方は仕事の時間が決まっています。

子供は、月曜日から土曜日まで保育園に行っています。日曜日は、公園に連れて行くとか 出来るように昼間に時間を作ります。毎朝、保育園に行く時には見送りをしますし、夜は 必ずお風呂に一緒に入るとか。どんなに短くても、週に5日ぐらいは必ず一緒の時間を作 ります。自分の子供が僕の顔を忘れては困りますからね。

それと、子供にも英語を覚えてほしいので、子供と一緒の時は英語を使っているんです。 インターナショナル・スクールはものすごくお金がかかりますから、日本の学校に行かせ ます。保育園も朝から晩まで日本語。だから、毎日必ず英語を喋るようにしているのです。 子供は、そんなにしゃべれないけれど、私の言っていることは結構分かっているみたい。
普通の日本の教育では英語を覚えるのは難しいから、日常の英語のコミュニケーションが 必要です。徹夜した日でも、朝3分でも4分でも見送りするとか、夜遅くまで仕事をしな ければいけない時でも、出来るだけお風呂に入るとか。お風呂の後にまた仕事に取り掛か れますから。

Q そういう生活の仕方は、会社勤めではできないですね。優先したいことを、仕事の合 間に挟んでできる。日本の生活では、職人さんの家庭に近い形だと思います。今はもう職 人という仕事が1%まで減って、勤め人がほとんどですが。
ところで、仕事の合間に、他の家事、例えば食事の支度とか、掃除、洗濯などはなさいま すか?

あ、私、そんなにヤンナイですね。掃除、洗濯は妻がしています。食事も、自分1人だっ たら絶対に作らない。カップヌードル食べたり、外食したり。1人で家に居る時というの は、たいてい妻と子供が遊びに行っていて、私だけ仕事があって家に残らなければいけな い場合なんです。仕事をしているから作る時間はないし、そもそもあんまり食べたくない。 献立考えて料理して食事してと、長い時間をかけてまで食べたくない。すぐに食べて仕事 がしたい。

Q 在宅ワークとは、家で仕事ができるから楽というものではなくて、1日中仕事のこと を考えて、1日中仕事ができる。仕事を一番に持ってこれるのが、最大のメリットという 感じですね。
お仕事は今、何人くらいでやっているのですか? パートの人達は、フレックスタイムですか?それとも定時に来てもらうのですか?

パートの人は、コーディネイトの方が1人、GolfWebが2人です。1人は大阪に住んでい て、もう1人は立川に住んでいるので、2、3回しか会ってないんです。何というか、「バ ーチャル社員」ですね。こちらから、「こういう結果が欲しい」と仕事を発注して、結果 が出ればお金を払うという契約です。やり方は全部自由にやってもらっています。別に9 時から6時まで働かなければいけないとかではなく、結果がよければお金を払います、と。 パートの人達は、別の仕事も持っていますから。要するに、フリーランサーですね。

Q あの、失礼ですけど、収入の方はいかがですか?在宅で仕事をする場合、収入の安定が一番困ると思うのですが。

あ、大丈夫です。10年やってきて、まだ大丈夫です。
Q やはり得意なこと、自分だけが出来ることを持っているのは、強いですよね。日本に居て、ゴルフが良く分かっていて、趣味でインターネットをしているフレッチャーさんだから、GolfWebの日本支社になってくださいというオファーが来たということが、非常に面白いと思います。

GolfWebの売上高は、会社にとっても大きいけれども、それはクライアントの1つです。 インターネットの仕事を始める前からしていたツアープロのコーディネートの仕事も全部 そのまま続けています。自分の時間が少なくなりましたけど、働き方はそんなに変わって いないですね。GolfWebの仕事で試合に行けば、プロゴルファーに会えますから、同じ場所で2つの仕事ができます。

例えば試合をインターネット上でライブ中継するために会場に行きます。そこで、選手が 休憩している時に15分程お茶を飲みながらとか、食事を一緒にしながら、次の日程の打 ち合わせをがしたり。付き合いの部分もありますけど…。実際、仕事場がどこにあっても 仕事ができる環境なんです。

在宅ワーカーというより、モバイル・ワーカーに近いですね。今、SOHOの仕事とい えばインターネットという風にマスコミなどで紹介されていますが、フレッチャーさんは、 インターネットを仕事にする前からSOHOを実践されていた。たまたま事務所が自宅で、規模が小さい。本当のスモール・オフィス、ホーム・オフィスですね。

在宅で働くにしても、請負仕事をやるのと、自分で会社をやっているのでは、気分的に全然違うでしょう。育児のために仕事を辞めざるをえない女性が、何か仕事がしたいからと在宅で働き始めても、請け負いで働いていると結局、内職と同じになってしまう。在宅ワーカーで自立するには、専門性を持ってフリーランサーになるのが理想だと思います。ただ女性の場合、現実には、子供が帰ってきちゃって、一緒に遊ばないととか、夫が帰って来ちゃって食事の支度が…とか。日曜日になると、家族が「つまんない」と言っているとか、家族のしがらみがあります。 もしも、奥様とフレッチャーさんの仕事が逆だったらと考えると、興味深いですね。

→第1部へ戻る


ミニフォーラムの目次へ
WOMのホームページへ
20 May 1998 by Honda