オンライン学習会「保育園」

 

 

7. 給食

Lさん:

去年の児童福祉法改正で、給食を民間委託できるようになったと聞きました。これが、今後、 どのような影響を及ぼすのか心配です。子どもの保育園では、給食やおやつを「食べること」は大切な保育の一環である、と考えられ ています。この保育園での、食事に関する保育の例をあげます。

1才児組から、カナッペなどの簡単なクッキングを子どもたちに体験させ、自分で料理して食べる喜びを教えます。4〜5才児組になると、種を蒔いて、毎日水をやって育てた野菜を収穫 して、それでカレーライスを作ったりもします。秋には、近くの田んぼでイナゴをとってきて、厨房で佃煮を作ってもらって、給食のときに食 べます。また、近くの山で野生の渋柿をとってきて、干し柿を作り、オヤツに食べたりもします。

参観日には、年長組が、うどんを打ちます。親も子も粉だらけになって、生地をこねて延ばし、 包丁で切るのを、厨房の職員さんが待ちかまえていて、ゆでて調理してくださいます。この日には、園児全員の給食に、手打ちうどんがつきます。「年長さんが打ったうどんは、味がある なー」と保育士さんが言えば、小さな子どもたちは、うどんを食べながら「年長組さんってすごいなー、うどんが作れるんだ!」と目を輝かせます。

お正月に、保護者も総出で餅つき大会をしたら、子どもたちが丸めてきな粉をまぶします。この日のオヤツは、餅入りぜんざいです。

こういった行事以外のふだんの日にも、厨房の職員さんは、子どもたちが食器を返しに来たり、 お代わりをもらいに来たりする様子から、子どもたちの食生活をよく把握して下さっています。

「○○ちゃんは、野菜が苦手だけど、今日は残さずに食べた」とか、「□□ちゃんは、このお かずが大好きで、必ずお代わりをもらいに来る」とか。

「食事」は、小さな子どもの生活の中で、もっとも基本的な営みです。また、毎日の献立や盛付けに季節感を盛り込み、大切な食文化を子どもたちに伝える大切な保育の場でもあります。給食を外部の業者に委託することで、このような食事と生活や保育との関わりは、今後、難しくなって行くのではないでしょうか?

別当:

Lさんご指摘の給食の民間委託は、私の最大関心事のひとつでもあります。

この件について、かなり詳しいレポートを書いてらっしゃる川田文子さんにも、お電話でお話をうかがったことがあります。結局のところ、理由は「経費節減」なんですよ。現業(給食の 調理員等)の方というのは、保育者よりも平均年齢が高いようですね。一説によると、平均給与 800 万という話も聞いたことがあります。

保育者のように「見える」存在ではないだけに、メスを入れやすいのでしょう。厚生省の方は 「実際病院でも老人ホームでも民間委託しているが、なんの問題もない」と言っていました。これに対して「病院で調理の方が病人に接することがありますか? 保育園では保育者同様の接触をしてるんですよ」と私は反論しましたが。

埼玉県川口市では、以前からすでに民間委託がなされているようで、現在の現業の方と同じく、 保育者的役割を担っているようです(運動会等の補助なども含め。川田さん伝聞)。でももし正規の現業職員が 800 万で、この方たちが時給 850 円だとしたら、また別の問題があるともいえますが。初期の頃には離乳食といってもただカレーを薄めただけとか、ひどいものも出たようです。離乳食はかなり特殊ですからね。この点も本当に心配です。

また保育園ではないんですが、確か中野区の中学校だったかな、民間委託直後に食中毒が発生しました。原因は調理者に保菌者がいたためです。必要な検査をしてはいたようです。でも提出が遅く、検査結果が出た時にはまさに「後の祭り」。こういう事実は忘れないでおきたい。私は民間委託になった場合、食事の材料を粗悪品に変えて、業者が利益を得ようとするのではないかという点が心配です。

あとこの点はかねてより保育団体にも申し入れもしていますが、例えば短時間保育者は保育会議に参加させないところが多い。個々の子どもに対する情報や明確な保育方針を伝えてもらわ なければ、どんなに質のいい保育者だってお手上げです。これが他社の人間ともなれば、ますます意思疎通が難しく、子どもたち一人ひとりの育ちや個性に合わせた給食作りなんて望めなくなるのは目に見えている。それともそこまでを保育園に求めるのは酷なんでしょうか。もし民間委託されて、様子がひどいようならお弁当持参を覚悟している我が家です。

世田谷区ではまだ実施の予定はないそうです。東京では台東区が厚生省の解禁以前から実施しているようですが、見学希望の自治体も後を絶たずだと聞いたことがあります。台東区の委託先企業はなんと現行取材拒否。なんともいやですよね。

Cさん:

給食の民間委託につては、個人的には反対です。

子どもがお世話になっている園でみていると、調理の方と園児とのふれあいってとっても大切だと思います。ふだん、かかわりがあるからこそ、たとえば、お腹の具合の悪い子には、それなりのメニューを枠が決まっている中で精いっぱい考えてくださいます。

1才児クラスのとき、特別に1才児クラス用の離乳食をわけていただいたことがあります。どういう味付けなら、みんなが食べるか、切り方を工夫してみようか、盛り付けを変えてみたらどうだろう… この子は卵抜きだけれど、なんとか色として黄色いものがいれてあげられないだろうか、と本当によく考えて下さっています。

そういうことが、民間委託、ましてやセンターから運ばれてくるなんてことになれば、保たれるとは思えず、保育の質の低下となってしまいます。形式的に保たれるんじゃだめなんです。 愛情がないと…。社員食堂じゃないんだから…。コスト削減ばかりに目が向けられるのではなく、あくまでも『子供にとって』なにが一番いいかを考えていけるように、我々母親がひっぱっていかなければならないなぁ…とつくづく思い ます。私たちって、そろそろ学童のほうに興味がむきつつありますが『自分たちが卒園したら、ハイ、 サヨウナラ』ではいけないんですよね。

Mさん:

調理の先生は、確かに保育もしています。それは、食事や行事の時だけでなく、普段の子ども の様子をみてくれたり、食事の話など子どもと関わり、成長を見守ってくれている。これはた いへんありがたいことです。

私が預けている保育園では、昨年給食室改築のため、約1か月ほど給食センターから給食をと りました。近隣にあるセンターの中から最もよさそうなところを選んだという話でしたが、メ ニューは揚げ物主体。スープも付かず、当時0歳児の下の子は、よく食べる方だったのですが、 残すようになりました。保健婦の先生が調査したところ、乳児クラスの半分の子どもが、その期間に体重が減ったそうです。幼児は最初それなりに喜んでいたのですが、やはり途中で飽きてきたとのことです。

食べることは栄養をとることに加え、喜びであると思います。また、0歳〜5歳児は成長の度合いや食べられる食べ物や嗜好など、年齢によって全然違います。やはり食事は園の子どもた ちのことをよく知っている人に作ってほしい。この部分のコスト削減には断固反対、と経験して思いました。

別当:

実は先日、小学校の給食調理の現業職員の方とお話する機会があったのですが、まったく残業 していないのに、全員に一律の残業手当がつくというのです。保育園の現業の方も同じ状況なのかはわかりませんが、こうしたものまで「保育コスト」として換算されるのでは、たまった ものではありません。また給食の民間委託に関してですが、委託されても「センター方式」になることは今のところ ありません。あくまで調理する人だけが派遣されてくることになります。

Lさん:

現在の行革で、この規制さえも撤廃しようという動きがあるようです。娘の保育所でもらった資料から引用します。

----- ここから引用 -----

規制緩和に関する論点公開
平成 10 年 9 月 22 日
行政改革推進本部 規制緩和委員会

62. 保育所の設置、運営、利用に係る制度の見直し

1. 規制の現状と進捗状況
2. 論点整理

【設備規制】

論点1:保育所設置者の負担を軽減する観点から、調理室の必置規制を廃止すべきではないか。

◇保育所の調理関係規制については、平成 10 年度の児童福祉施設最低基準の見直しにおいて、

1) 保育所内の調理室を使用すること、栄養士による配慮が払われていること等の要件を満たしていれば、調理の業務委託を行なうことができ、

2) 調理業務の全部を委託する施設にあっては、調理員を置かないことができることとされたが、新規参入に当たっての保育所設置者の負担を軽減する観点から、調理室の必置規制は廃止すべきであると考える。

◆先般、中央児童福祉審議会保育部会の意見等を踏まえながら、調理業務に関する規制緩和を図ったところであり、まず、こうした見直しの実施状況について十分検討した上で対応すべきである。

----- 引用終わり -----

ということは、実際に民間委託した保育所の実態を調査して、それほどの問題が起きていなければ、調理室を設置する義務も、撤廃の方向へ持って行かれてしまうかもしれない、ということですよね。乳幼児にとって、食べること、食生活の習慣づけがいかに大切か、そのためには、食は保育の 大切な一部分でなければならない、という観点がスッポリと抜け落ちていると思います。なぜ調理員や調理室が保育所内に必要なのか、という議論が、もっともっと重ねられなければなりません。

調理員が、保育の補助に当たっている、というのは、あくまでも一面的で補助的な参加にすぎ ません。それよりもむしろ、調理員さんには、日常の保育の中で、「自分たちの食べるものは、 こうして作るんだよ」とか、「食べたものが、自分たちの体を作っているんだよ」とかいうことを、保育者の先頭に立って、子どもたちに教えてもらいたい、と思います。そのために、保育所に調理室を置き、調理員を置くのではないでしょうか?保育への新規参入が容易になり、保育所の数が増えることは歓迎しますが、子どもたちの生活の場でもある保育所を、そう安易に作ってはいけない、と思います。

別当:

ということは、実際に民間委託した保育所の実態を調査して、それほどの問題が起きていなければ、調理室を設置する義務も、撤廃の方向へ持って行かれてしまうかもしれない、というこ とですよね。資料の提示、ありがとうございます。

「親の会」では厚生省サイドの情報として「センター方式はない」という知識だったのですが、 行革の方面でとんでもない議論がされていたということになりますね。これは何省管轄の組織なんでしょうか? それとも内閣の直属ですか?もしわかればご教示いただけますか。所属メンバーを調べて、現役の保護者として、反論ののろしをあげる必要性がありそうですね。 現場を知らない人たちの意見としか思えない。まずは詳細を調べて、手近なところで新聞の投書という手もありますよね。

Lさん:
調べてみました。総理府に、行政改革推進本部があり、その下部組織として、規制緩和委員会が組織されているようです。 詳しくは、総理官邸のホームページの中から審議会のコーナー

http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/index.html

をご覧になってください。この中の「第4回会議議事概要(平成 10 年9月 22 日)」に、詳細が掲載されています。委員会のメンバーは以下の通りです。

規制緩和委員会 構成員名簿 ( 平成 10 年9月 22 日)

委員長  宮内 義彦 ( オリックス ( 株 ) 代表取締役社長 )
委員長代理 鈴木 良男( ( 株)旭リサーチセンター代表取締役社長)
委員 石倉 洋子 ( 青山学院大学国際政治経済学部教授 )
委員 岩田 規久男 ( 学習院大学経済学部教授 )
委員 川口 順子 ( サントリー ( 株)常務取締役 )
委員 神田 秀樹 ( 東京大学法学部教授 )
委員 田中 一昭 ( 拓殖大学政経学部教授 )
委員 野口 敞也 ( 日本労働組合総連合会副事務局長 )
委員 浜田 広 (( 株 ) リコー会長 )
委員 牧野 昭次郎 ( ポリファイブロン・テクノロジーズ・インク副会長 )
委員 アンソニー・ミリントン ( 欧州自動車工業会東京事務所理事長 )
委員 八代 尚宏 ( 上智大学国際関係研究所教授 )

このメンバー中、医療・福祉分野のワーキンググループは、主査が八代氏、副主査が野口氏とあります。また、この規制緩和については、一般から意見を求める「意見照会」 ( パブリック・コメント) 手続き制度を来年4月から導入する方針があることが、今年 10 月 21 日の新聞に載っていました。

普光院:

この規制緩和委員会には要注目です。まもなく次の意見が発表されるようです。

社会福祉構造改革は、保育に限らず、老人・障害者・保育など、福祉制度全般に関するものですが、保育に関しては「経営主体の規制緩和」が行われるのではないかと言われています。そうなると、従来の社会福祉法人のみならず、生協、農協、財団法人、株式会社なども認可保育園の経営主体になれるのですが、上文の「新規参入に当たっての保育所設置者の負担を軽減する観点」というのはこのことを指していると思われます。

「親の会」で要望書をもって厚生省を訪問したとき、親の会スタッフは、保育園では、離乳食、 アレルギーなどの微妙な対応が必要なので、調理室で専門の調理員がつくる給食が必要、ということも挙げて給食民間委託反対を強く訴えましたが、厚生省の課長補佐の方は、病院給食を例に挙げて、病院のようにいろいろな健康状態の人がいて、特殊な食事が必要な施設においても、給食を民間委託して、問題を生じていない、と反論されました。これに対して、 私たちからは、調理員は保育者である、行事のときも、子どもたちといっしょに行事食をつくったり、子どもたちと深いつながりをもっている、それは子どもたちにとっても大切なこと、という意見が出ました。しかし、具体的にイメージしてもらえたとは思えませんでした。私たちが「調理室は絶対に必要」と考えるのはなぜなのか、それはなぜ民間委託ではできないのか、きちんと言えないと負けてしまうと思います。

私立保育園連盟の理事でバオバブ保育園園長の遠山先生も似たことを言っておられました。「教える」というよりも「実感させる」というニュアンスでしたが…。つまり、食べ物というのはどこからともなく出て来るものでなく、材料があり、つくる人がいて、つくられるものだということ、それも子どもが身近に知っている(家族に近い)人が見えるところでつくる、ということが子どもたちの体験として必要だというご意見でした。

既成品的環境が多くなり、子どもたちのナマの体験が不足していると言われている現代だから こそ、調理室にこだわりたい。給食センター方式は絶対に抵抗があります(と言うと、保育園だけそんなぜいたくは許されない、ってな意見がきっと出てきてしまうんですね。幼稚園は調理室ありませんものね。小学校もセンター方式があるし…)。

別当:

わざわざお調べくださって、ありがとございます。またしても見つけてしまいました「八代」さんの名前を。どうも彼の発想は「経済至上主義」 とでもいいますか、机の上だけの理論ですね。いつも。こうした委員会の場合、特に「長」のつく人は政府の御用学者みたいなもんですからね。要注意です。

取り急ぎ対策としては

  • 新聞への投書
  • 各委員に対し、質問状もしくはアンケートを配布する
  • 八代さんに面識のある普光院さんに、インタビューしてもらう>だめ? 普光院さん

でしょうか。個人的にはアンケートを実施して、彼らが保育園というものをどの程度知っているのか探りたいです。人数が少ないので一人でもできそうですし。

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Last updated on 17 September 2001 by Michiko Takeda