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オンライン学習会「介護」
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9. 塚田さん 第3回講義
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<痴呆とは?>
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ここで痴呆について、お話をしたいと思います。 1.痴呆とはなにか 痴呆とは「一度正常なレベルまで発達した知能が、脳の器質的疾患のため正常以下のレベルまで低下した病的状態のこと」をいいます。つまり、成人におきる記憶・知能の障害といえます。高齢になると、健康な人でも忘れっぽくなりますが、知能あるいは判断能力は正常であるため社会生活には支障は起きません。こういう状態は、「良性健忘」といって、痴呆とは区別します。痴呆の場合、記憶障害だけではなく知能障害が起き、判断能力が著しく低下するため社会生活が困難となるのが特徴です。 多くの場合は、痴呆は健康な脳には起きず、脳神経細胞が障害をうけた場合に発症します。また、基礎となる脳の障害を反映してゆっくりと進行します。期間は個人差がありますが、 3-4 年から十数年にわたり、完全な痴呆に至ります。ところで、高齢者の方は感染症や循環障害、向精神薬による薬物中毒、脱水状態によって意識障害を起こすことがあります。軽度の意識障害では痴呆と類似した症状を起こします。これらは急激に発症し、原因が除去されると短期間に改善するのが特徴です。但し、治療の時期を失すると生命予後に関わる重篤な状態になる可能性も高く、言っていることが急におかしくなった、と思ったら、かかりつけの医師に相談することも必要だと思います。 ところで、痴呆の老人の約半数に、行動異常や精神症状をおこします。例えば、ものを盗られたと思いこむ盗難妄想、夜間の不穏行動、幻覚妄想状態、多動、徘徊、鬱状態、自発性の低下、無気力、攻撃行動があります。私が最近相談を受けた中では、自分の財産を盗んだとか、部屋に勝手に入って財布を盗んだとか、近所に吹聴して回って、お嫁さんが困って相談にきたケースがありました。(これは圧倒的におばあさんが多いかな)、また、何度も何度も同じことを言ったり、数分ごとに呼びつけたりするため、同居の家族が参ってしまうケースもありました。 また、前述の通り、安静は痴呆を悪化させる要因です。病院では、高齢入院患者の夜間不穏行動はよく経験します。気がつくと点滴や尿のための管を全部自分で抜き取ってして血まみれでベッドサイドに立ち上がり、ベッドの上に寝かせようとすると殴りかかってくることがしばしばです。いくら高齢であるとはいえ、男性の場合、力はあなどり難く、何人ものスタッフが押さえつけることになります。私も夜間当直の際殴られそうになった恐い覚えがあります。夜間に暴れたり騒いだりされる患者が一人でもいると、その一人のために少ないスタッフの手をとられてしまいます。 前回、痴呆のある場合とない場合では、どちらが介護しやすいかということを書きました。Gさんからは意識がクリアな小うるさい患者より痴呆のあるおとなしい患者の方が介護しやすいとのコメントをいただきましたが、患者個人の性格にもよりますが、一般的には痴呆がある方がと介護者のストレスはとても大きくなります。たとえ、寝たきりになっても、失禁したり、昼夜逆転して夜間に大声を上げたり、呼ばれたりすると、同居している家族は眠れなくて大変です。また、意志の疎通ができない、予想もしないときに予想外の行動をとられると、ケアする方にはかなりの負担になります。このため、不穏や幻覚・妄想、多動、攻撃行動などに対し、ケアする側に配慮して向精神薬による治療が必要になります。また、以前は「抑制」といって、患者をベッドに縛りつける方法も採られていましたが、患者の人権に配慮し、さすがに廃止の方向に向かっています。 以下にアメリカ精神医学会の痴呆についての診断基準を参考に提示します。 <診断基準要点 (DSM-III-R) )> A ) 短期記憶及び長期記憶の障害がある B ) 少なくとも次のうち 1 つが認められる 1 ) 抽象思考の障害 2 ) 判断の異常 3 ) 失語、失行、失認など高次大脳皮質機能障害がある。 4 ) 人格の変化 C ) A、Bにより職業、通常社会的活動或いは対人関係に支障をきたす D ) 意識障害のない時でも上記所見が認められる E ) 次の1 ) 、2 ) がある 1 ) 上記障害の成因的に関連すると考えられる器質的脳病変の存在 2 ) 1 ) が明らかでなくとも、非器質的変化では十分説明できない場合 注) 1995 年からは個々の疾患別に痴呆を定義 器質的 : 解剖すると組織に障害や異常が認められるもの。 非器質的=機能的 : 組織に障害が認められないもの。 痴呆は脳神経細胞の器質的障害が基盤におきますが、では、痴呆を引き起こす病気にはどのようなものがあるのでしょうか? 2. 痴呆を示す疾患 痴呆を起こす疾患には下記のような病気があります。高齢者の方に多いのは、脳血管性痴呆(特に多発性梗塞性痴呆)とアルツハイマー型痴呆です。欧米では、アルツハイマー型痴呆の方が脳血管性痴呆より多いのに対し、日本では脳血管性痴呆が 40 − 50 %と多く、両者をあわせると全体の9割位を占めます。 1 ) 脳変性疾患 アルツハイマー病、老年痴呆、ピック病、ハンチントン舞踏病、正常圧水頭症、多発性硬化症、 パーキンソン病、進行性核上麻痺、多層性白質脳症 2 ) 血管障害 脳血管性痴呆(多発梗塞性痴呆、ビンスワンガー病)、モヤモヤ病、脳動静脈奇形 3 ) 頭蓋内占拠性病変 脳腫瘍、硬膜下血腫 4 ) 外傷 外傷性痴呆 5 ) 感染症 進行性麻痺、急性硬化性脳炎、クロイツフェルトヤコブ病 6 ) 中毒性障害 アルコール性痴呆、コルサコフ症候群、慢性バルビツール中毒 7 ) 代謝障害 尿毒症、肝障害、ウイルソン病、ポルフィリン症、高 Ca 血症、癌の遠隔効果 8 ) 内分泌障害 甲状腺疾患、アジソン病、副甲状腺疾患、低血糖症、クッシング病 9 ) 酸素欠乏性痴呆 貧血、うっ血性心不全、慢性肺疾患、麻酔後脳症、一酸化炭素中毒 10) ビタミン欠乏性痴呆 サイアミン・ニコチン酸・ B12 ・葉酸欠乏症、ペラグラ 11) てんかん アルツハイマー病といえば、アメリカのレーガン大統領がアルツハイマー病であることを告白して以来、日本でも一般に注目を浴びた疾患だと思います。最近では、痴呆=アルツハイマーと代名詞のように使われているかもしれませんね。また、映画「 Back to the Future 」で有名なマイケル J フォックスはパーキンソン病と闘病中です。脳血管性痴呆は前述の通り日本人に多い痴呆です。もう少し痴呆性疾患について学習してみましょう。 3.アルツハイマー型痴呆 (Senile Dementia of Alzheimer Type; SDAT) アルツハイマー病とは初老期に発症する、大脳の進行性萎縮(つまり脳がどんどん縮んでしまうこと)により痴呆を起こす疾患です。 45 − 65 歳の女性に多く発病します。近年、脳にβアミロイド蛋白とよばれるタンパク質が蓄積することによる分子生物学的異常が解明されつつあります。アルツハイマー型痴呆とは、高齢期に現れ、アルツハイマー病に似た病像を呈する症候群です。 75 歳以降に好発します。性別比は、 1 :3でやはり女性に多く認められます。 症状は、初期は記銘記憶障害( ex. たとえば物覚えが悪くなる、人の名前や土地の名前がいえない。)が出現しますが、人格も著明に障害されます。活発な情動反応を示し、病識はなく多幸的です。進行するまで、周囲に気づかれないことも少なくありません。妙にはしゃいだり、感情的に怒ったり泣いたり、落ち着きのない行動をとることもあります。盗難妄想や徘徊がでるのも SDAT の特徴です。進行すると、会話内容の把握が困難になり、独語、無意味な多動・濫集(むやみやたらな収集癖)が多くなり、空間失認が出現すると徘徊しても帰宅が不能になります。頭部CTやMRIではびまん性脳萎縮を示します。 *アルツハイマー病の危険因子 ところで、アルツハイマー病の危険因子について盛んに疫学的研究が行われています。現在、異論はあるものの、危険因子として挙げられているものは下記の通りです。 (1)加齢(年齢が進むにつれ発症率が高くなる。) (2)性別(悲しいかな、女性であることは、アルツハイマー病のリスクです) (3)人種(日本人は少ない。生育環境の方が影響を与える説もあり) (4)家系(家系内に痴呆の患者、ダウン症の患者がいるとリスクが高くなります) (5)本人出生時の親の年齢(ダウン症と関連して、母親の年齢との関連性を指摘する報告が散見されるが、より多くの報告で関連を認めていない) (6)頭部外傷 (7)低血圧(頻度は高くない) (8)アルミニウム(まだ明らかではないが、アルミニウム自体は強い神経毒を持つ。アルミ鍋はやめた方がよさそう。) (9)病前性格:若いとき、内閉型、感情型、粘着型の性格は高齢になって痴呆になりやすく、同調型、執着型は痴呆に少ないというデータがあります。 内閉型(愛想がない、閉鎖的、無口、社交的でない、周囲に溶け込めない) 感情型(気性が激しい、感情的、癇癪持ち、短気、わがまま) 粘着型(頑固、杓子定規、話が回りくどい、無遠慮、気むずかしい) 執着型(堅い、責任感が強い、正義感が強い、義理堅い、がんばり屋) 同調型(社交的、積極的、明るい、行動的、開放的) 4. 脳血管性痴呆 脳血管性痴呆は、脳の血液循環障害に伴う痴呆で、最も多いのは脳梗塞の多発による−つまり脳の微小な血管が詰ってしまい、脳神経細胞が障害を受けてしまう−多発脳梗塞性痴呆というタイプです。脳血管性痴呆は日本人の痴呆の約 50% を占めます。初老期 50 歳代から発症し、アルツハイマー型とは対照的に、男性に多く見られます。 発症は急激に始まり、階段状に増悪していきます。症状はよくなったり悪くなったり動揺性で、脳血管障害に伴う麻痺や言語障害、運動障害を伴うこともあります。アルツハイマーとは異なるのは、知能や記憶などが部分的に障害されるまだら痴呆を呈することで、度合いは比較的軽度です。また、人格障害はなく、病識も末期まで保たれます。脳 CT では、多発性の低吸収域(脳神経細胞の障害を反映する)や側脳室の開大が認められます。 *脳血管障害の危険因子 これは後述する脳梗塞と同じです。高血圧、糖尿病、高脂血症などを有する人に多く発症します。 皆さん、及びご家族の痴呆の危険性はいかがでしょうか。 皆さん誰しも「ボケたくない」と思いますよね。ボケの予防は可能なのでしょうか。先に挙げた危険因子をふまえて、考察すると以下のようになります。 5.痴呆の予防 (1) 脳血管性痴呆 脳血管痴呆は、脳卒中発作と同じ危険因子が考えられます。生活習慣病である高血圧、糖尿病、高脂血症をコントロールし、動脈硬化を阻止するとかなり発症予防が期待できるでしょう。つまり、ライフスタイルを改善することが大切です。詳細は、後ほどふれたいと思います。 (2) アルツハイマー病 アルツハイマー病には種々の危険因子は想定されているものの、未だ確定的ではなく、発症を予防できる手段は、現代医学では見つかっていません。 本邦の研究では、北大公衆衛生学教室で、痴呆患者のライフスタイルと老年期痴呆の発症について重回帰分析を行った結果、「若いときからの精神・運動不活発」が非特異的に痴呆をまねくライフスタイルと結論しています。同教室では痴呆の患者に脳活性化訓練として、正常者と共に運動療法・歩行訓練などの理学療法、入浴を含む物理療法、食事の準備などの生活動作訓練、関心意欲向上、趣味のカラオケ・茶道・詩吟・手芸・書道・鑑賞、ゲートボールや玉入れゲームなどの集団レクリエーションを行った結果、アルツハイマー性痴呆・脳血管性痴呆のいずれも、進行予防に対し効果的だったとしています。 下記は厚生省精神保健課の痴呆予防のためのガイドライン ( 案)です。(フレーズが、あまりに古くさく、ボケ患者に対するガイドラインのようで泣かせますが、念のため提示します。一次予防なので、もう少し、対象年齢を若くしたフレーズにすればよいのにと思うのですが) (1)いつまでも、興味を持って学びましょう (2)趣味を持ち、豊かな老後を迎えましょう (3)友達を増やせ 心の枝のばせ (4)無理せずに 運動すれば いい刺激 (5)頭へのけがや衝撃 痴呆の原因 (6)歯を守り おいしくかんで よい一生 (7)成人病 防いで脳を 健康に (8)検診は 痴呆の頼れる 防波堤 (9)物忘れ ひどくなったら 相談を ( 10 )ボケ治療 一歩退き 二歩前進 いずれにせよ、「若い頃から心も体も鍛える」ことが、予防のファースト・ステップといえます。自戒を込めて「皆さん、時間に追われて、体を動かすことをさぼっていませんか?」 1.寝たきりの原因としての脳血管障害 先に提示したように、寝たきりの原因疾患の第 1 位は、循環器系疾患で、 51.1 %、特に脳血管障害が 38 %を占め、 1 /3以上を占めています。また、軽症の脳血管障害を反復したり、潜在的に進行することによって、脳血管性痴呆に移行します。 特に、日本は、他国に比し脳血管障害及び脳血管性痴呆の発症率は高いのが特徴です。ですので、痴呆や寝たきりの予防のためには、脳血管障害を予防することが大変重要といえます。 2.脳血管障害とは何か 脳血管の器質的変化や血流変化或いは血栓などにより、脳に一過性ないし持続性の循環代謝低下、あるいは出血等が生じるものを総称して脳血管障害と定義します。平たく言うと、脳神経組織に血液を送るパイプ(血管)が、さび付いて(動脈硬化)しまい、その結果、パイプの流れが悪くなります。さらに、さびが一部剥離して、血管をつまらせたり、パイプが弱くなって破裂すると、脳神経組織を破壊したりすることがあります。これが、脳血管障害です。 脳血管障害には、脳の血流が途絶えて脳神経細胞が破壊される脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血・くも膜下出血などがあります。脳血管障害のうち、最近の高血圧治療の進歩により、脳出血は減少していますが、脳梗塞・くも膜下出血は漸増しています。最近は、脳卒中のように発作的に(いわゆる、プッツンして)起きるものだけではなく、軽度のしびれ感や麻痺、あるいは症状なく起きるものが増えてきているのです。 いわゆる脳卒中 (appoplexy) とは脳の循環障害によって急激に倒れ、意識障害を呈し、片麻痺を合併している病態全部を指します。ですから、脳梗塞や脳出血などあらゆる病気を含むわけですね。 3.脳血管障害の危険因子 脳梗塞を発症する危険因子はなんといっても、高血圧です。そして、 糖尿病、高脂血症など生活習慣病が挙げられます。高血圧と脳血管障害との関係については、福岡県久山町の 40 歳以上の全住民を対象とした疫学的研究が国際的にも大変有名です。 20 年間の追跡調査の結果、脳出血、脳梗塞のいずれにおいても、血圧が低い群から高い群にかけて発症頻度が段階的に高くなっており、特に初診時の血圧が拡張期 ( 下の血圧 ) が 110mmHg 以上の場合は、脳出血、脳梗塞いずれも他の血圧群に比して有意に高いことなど、血圧と脳血管障害のつよい関連性が証明されています。 同様なことは米国でもフラミンガム研究という大規模調査で示されています。安静時血圧の正常値を 140/90mmHg 以下にコントロールしたいところです。また、糖尿病、高脂血症も動脈硬化を促進し、血糖は空腹時 110mg/dl 以下、総コレステロール 220mg/dl 以下、善玉コレステロールである HDL コレステロールは 40mg/dl 以上が治療の目安です。 4.脳血管障害の予防 予防には、当たり前のようですが、やはり危険因子である生活習慣つまり食事療法、体重のコントロール、そして適切な運動が第一です。 肥満は高血圧を発症しやすいだけではなく、インスリンなどの内分泌代謝機能を低下させます。 Body mass index ; BMI (体重 kg/( 身長 m)2 )が 22 ± 2 が目標値です。日常の食事は、減塩食( 10g/day 以下)、低脂肪食 ( 飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸の多い食事をとる。卵やウニ、イクラ、牛ロースなどは控えた方がよい ) 、適切なカロリー、カロリーの少ない新鮮な野菜、果実の摂取は動脈硬化の予防に効果的であり、カリウム摂取が増え、血圧にはよい働きをします。アルコールなら、少量のアルコールであれば気分転換やストレス解消に役立つので、エチルアルコールで 30ml 、ビール大瓶 1 本、ウイスキーシングル 3 杯、日本酒なら一合程度を限度として飲んでもかまいません。 しかし、多忙な働く主婦にとってはただ作るのだって大変です。いちいち食事の内容にはかまっていられませんが、最近ではファミリーレストランの外食メニューのカロリー、塩分が掲載された本やいろんな便利な本が出版されているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。 また、なかなかわけの分からない数値だけいわれても、症状もないうちは、積極的に治療する気にはならないものですが、動脈硬化は深く静かに潜行し、気がついたらぼけていたあるいは、寝たきりだったということにもなりかねません。(決して脅しているわけではありませんが…) そして、食習慣を、高齢になって血圧が高いから嗜好を変えろといわれても、実際は大変苦痛です。若いとき、できれば小さいときから、薄めの味に慣れさせるのは母親としては大切な仕事かなと思います。 痴呆の予防、寝たきり防止のために運動療法の必要性についてお話しましたが、皆さんは、生活習慣病の予防と治療には実際にはどの程度の運動をどれくらいの時間行なえばいいかということについてご存知でしょうか。 さて、私は循環器の医者なので、健康維持のため運動療法について、ここで触れたいと思います。 1.運動強度 運動能力は、当然個人差があります。一般に、持久力の指標として最大酸素摂取量が用いられています。運動強度をあげていくと酸素消費量はそれに伴い漸増していきますが、あるレベルでそれ以上酸素摂取が増えなくなります。この時の酸素摂取量を最大酸素摂取量といい、その時点での運動強度を最大運動量といいます。これを用いることにより、その人にとっての運動強度を評価することができます。 ところで、運動の強度は弱すぎても効果はありませんが、強すぎても心肺系に過度の負荷がかかったり、あるいは脂質や糖質の代謝にあまり好ましくないことがわかっています。現在のところ、高血糖、高脂血症の運動療法には最大酸素摂取量の 40 − 60 %に相当する強度の運動が、また、呼吸循環器系の維持向上には最大酸素摂取量の 50 − 60 %に相当する強度の運動が理論的に推奨されています。 しかし、実際には酸素摂取量をいちいち測るわけにはいきません。そこで、具体的な目安として、 Borg 指数という、 15 段階評価自覚症状のスケールが用いられています。自覚症状として「やや楽である。」と感じる程度の運動が、望ましい運動強度である最大酸素摂取量 50 %前後と一致するとされています。 2.運動時間と頻度 また、運動のホルモン活性や酵素活性効果は、運動を 3 日以上休止すると消失してしまうため、できるだけ継続して毎日行う必要があります。その際 200kcal の運動量が最低必要量と考えられています。 200kcal の運動量としては、体重 50Kg の女性の場合、散歩 (50 − 60m/min) であれば 72 分、水泳(楽に) 30 分、ラジオ体操 52 分、テニス 40 分ということになります。 これは、 1 日に何回かに分けても( 1 回最低 10 分)よいことになっています。まとめて一時間散歩するのは辛いけど、朝 20 分、お昼に 20 分、夕方 20 分と分けてみるのもよいでしょう。また、最近市販の消費カロリーカウンターがありますので、それを使ってみるのもよいかもしれません。 このように、生活習慣病の予防のためには、毎日、無理なく楽しく継続できる程度の全身を使った運動を、 1 日最低 200kcal の運動量を行うのが望ましいといえます。週末にまとめてゴルフ、テニスだけというのでは、せっかくの運動の効果はなかなか期待できません。 3.骨折と運動 講義の最初の方で、寝たきりの原因に骨折などの、筋骨格系の疾患が多いことを述べました。しかし、最近これに関連して、骨粗鬆症=寝たきりというような情報が過度に流されている傾向があります。確かに、骨粗鬆症に伴う骨折が増えているのは事実ですが、骨さえ丈夫にすればよいというわけではありません。 1995 年のアメリカスポーツ医学会で提唱されているように、中高年の骨に及ぼす運動の効果は、加齢に伴う変化を改善するのではなく、運動不足状態や不活動に伴う変化を軽減するのが実態で、しかもその程度は数値上はわずかであると考えられています。むしろ重要なことは、運動を継続することによって転倒回避能力としての体力(筋力、柔軟性、全身持久力、協調性など)を向上させ、転倒の機会と程度を減少させ、骨折の発生を減少させることと考えられます。 このように、生活習慣の改善、疾病の予防、健康で活動的な生活を送るためには、運動は必須です。日頃画面を見つめ続けることが多いと思いますが、少しでも、体をうごかす気になればと、思います。 わたしは、現代の西洋医学の立場での運動について簡単にお話しましたが、Eさんさんからもいろいろなお話が聞けるかと期待しています。
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Eさん:
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私は現在 60 代 70 代の女性のヨガクラスをもっています。クラスで気づいたことをお話させていただきます。 Sさん 75 歳。腰痛、膝痛 句会、史跡めぐり、歌舞伎鑑賞、同人誌に小説寄稿など、元気な体で趣味を満喫したいという一心で、ヨガクラスへ。実母と夫の介護の期間が 18 年あってやっと自分の人生を歩もうとしている方。暇つぶしとか、老化防止にという目的より、はるかに積極的なこころで臨んでいらっしゃいます。「いきがい」をもつということはどんな療法よりすぐれものではないでしょうか。Sさんの家族は日頃から、彼女の趣味を応援しています。こんな支え方はいいですね。 Tさん 84 歳。お嫁さん( 55 歳)とともにクラスへ。痴ほうの症状時々。 彼女のために特別メニューは組まず、できる範囲でやってもらう。お嫁さんはボケ防止にと必死だが、本人はのんびり、ゆっくり。刺激が弱すぎると、大脳にも筋肉にも効果が現れず、反対に、刺激が強すぎると、骨折や筋肉損傷の危険が伴います。特に骨折は気をつけなければなりません。腰骨や背骨が変形している上に、骨がもろくなっています。おばあちゃんのやり方が違っていると、お嫁さんが「違うでしょ、右手を左足に持っていって・・」と横から口が出ます。(私が指導しているのに・・・・)
頭で理解して行動するまでに時間がかかるということと、緊張した場所で何かをいわれても、パニックに陥っていて理解できる状態ではないことを、知っていただきたいと思います。(お嫁さんにこのことを話し合って理解してもらいました。)
このくらいの年齢になると理性というより感性の世界に住んでいらっしゃるような気がします。ちょっとどきどき、わくわくすることを求めながら、しかも、自分が居心地が良い安全な場所を求めるようになります。楽しいなかにも、けじめをもった内容がポイントでしょうか。 「継続は力なり」という言葉を彼女たちの姿をみていて教えられます。そして、やっぱり人生の先輩だなーと感心してしまいます。 そしてもうひとつ、今の 20 代から 40 代の人たちが、 60 代になってもこれだけの肉体を持ち合わせているだろうかと考えると、とても不安があります。 |
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Last updated on 17 September 2001 by Michiko Takeda