
「結婚の中味を問う時代」自己決定権がキーワード 福島瑞穂
民法改正要綱案まとまる
国会へ、どんどん声を届けよう
夫婦別姓 婚外子の相続分差別撤廃 五年別居で離婚
民法改正要綱案が発表され、それに伴い、戸籍法改正のための民事行政審議
会のための民事行政審議会の答申も出された。家族が同じ戸籍に入る形だ。こ
の方向で民法改正案は国会に上呈される。今までの運動の要求からは後退は否
めないが、国会上呈を前に、どう考え、行動していくのか、弁護士の福島瑞穂
さんと様々なグループの人に聞いた。
1月16日に法制審議会でまとめられた民法改正要綱案は、結婚、離婚、婚外
子差別の撤廃を三つの柱としている。
まず、第一の柱である結婚であるが、結婚できる年を男女ともに18歳として
いる。そして、女性だけにある再婚禁止期間六カ月から百日に短縮している。
これは、男女平等を徹底するには撤廃すべきだと考える。
今回の改正案の一つのポイントは、夫婦別姓選択制の導入である。同姓と別
姓のいずれもどちらかを原則とか例外という扱いにはしないという点はいいの
だが、実際の改正案は、極力今の制度や戸籍のあり方に変化を加えないもので
ある。
別姓を選択する夫婦は結婚届を出すときに子どもの姓を夫にするか妻にする
かを決めないといけない。結婚時に選んで子どもの姓になったほうが戸籍筆頭
者になり、そして子どもの姓はすべて統一される。
現在、約98%の女性が、夫の姓に変えている。現在の力関係からすると、子
どもの姓は、圧倒的に男性の側になってしまう。戸籍は、たとえば父親と子ど
もたち全員は「山本」で、夫婦別姓にしたい母親だけが「福島」である。
これでは、結果として子どもの姓を決定するときに男女不平等になる。
そもそも結婚時に、子どもの姓を決めさせることは、結婚は両性の合意のみ
で成立するとした憲法24条に反している。
結婚をすることと、子どもを持つことは全く違うレベルのことである。今の
改正案では、結婚と子どもがワンパックになってしまう。
子どもは、未成年のときは「特別の事情」があるときは、家庭裁判所の許可
を得て、姓を変えることができる。
既に結婚している人も、法律施行後一年以内に配偶者とともに届け出をする
ことによって別姓にできる。しかし、単独でできるとすべきである。
第二の柱である離婚についてであるが、「夫婦が五年以上継続して婚姻の本
旨に反する別居をしているとき」は、裁判の離婚が原則として認められる。た
だ、別居中生活費を送らないで、「アッカンベー」をしていたような夫からの
離婚を封じる意味で、「離婚の請求をしている者が、配偶者に対する協力及び
扶助を著しく怠っていることにより、その請求が信義に反すると認められると
き」は、裁判で離婚が認められない。
財産分与は、?不明の場合は二分の一と推定される。
第三の柱として、婚外子の相続分を、婚内子の二分の一と規定した民法900
条四号但書の削除がある。このことは子どもの権利に関する条約、国際人権規
約B規約、憲法からいって当然のことである。戸籍の続柄欄もなくして、単に
性別欄(それも必要ないかもしれないが)にすべきである。
夫婦別姓選択制とは、どういうパートナーシップをパートナーと築いていく
かという問題だし、離婚の破綻主義・婚外子差別の撤廃は、形式のみの結婚に
は、速やかにお葬式を出し、結婚外の女と子どもと、結婚内の女と子どもの線
引きをなくそうという第一歩である。
結婚のなかみを問う時代、そして自己決定権がキーワードである。「本妻」
を保護しようとする政府から個人の尊厳確保へと政策が変わる時代である。惜
しむらくは、別姓の子どもの姓と戸籍制度である。
国会の中で変わる余地はある。大いに意見を出していこうではないか。
現在の民法改正の動向について、女性たちの感想を聞いた。
通称で別姓を通している西知子さんは、「民法改正が通ったら、別姓に届け
直すつもり。でも、もう子どもを作る気が無いのに、子どもの姓を届け出るな
んて、信じられない。」卒論で、婚外子差別について取り上げた島田真知子さ
んは、「生まれながらに婚外子の差別があるのは、許されないと思った。戸籍
の続柄表記はどんなところにも関係しているので、今回なくしてほしい」
自分から子どもを連れて家を出て別居して三年、マンガ『結婚ってなんなの?』
を描いた天野章子さんは「別居五年で、離婚が成立という制度ができるのを心
待ちにしている。離婚が成立したら。母子家庭への援助制度が受けられる。養
育費の制度化もして欲しい。」
民法改正とともに気になる婚外子の戸籍の続柄については、法務省は民法改
正で、相続分の差別がなくなれば、改正の予定、という。今回の改正は与党の
中でも反対論は根強い。
一月、国会の一般質問で、自民党の村上正邦参議院議員が、「夫婦別姓は、
家族の崩壊の芽」と首相に質問した。
これから、国会に市民グループも働きかけを強めていこうとしている。
福岡県で活動する「婚外子差別を無くし戸籍制度を考える会」の松崎百合子
さんは、「昨年、県議会に女性二十四団体で請願した。今から、国会議員に働
きかけていく」。
「個が基本サ!くらぶ」の三澤史子さんは、「今の改正は一番最小の改正に
なりそうだ。でもこれで駄目となったら、反動が怖い。国会議員、特に法務委
員にどんどん声を届けて、子どもの姓の事とか、言っていかなければ。ロビー
活動のための情報も流す予定なので、役立ててほしい」と。
住民票続柄裁判交流会の田中須美子さんは、「婚外子差別撤廃の五項目の請
願署名を行い、国会に紹介議員を増やしたいので、賛同団体、協力を募集して
いる」と。出生差別の法改正を求める女たちの会の富沢由子さんは「民法改正
と同時に出生届の摘出、非摘出のチェックをなくすよう、戸籍法の改正もして
ほしい」と。
婦人民主新聞「ふぇみん」1996年2月15日(第2443号)掲載
ふぇみん編集部の許可をいただき当ページに収録しました。