私たちの現在:日本の女性と子どもの人権についてのレポート

夫婦別姓

【英訳はこちら】
執筆・弁護士/吉岡睦子

               

■日本の夫婦の姓

日本の民法では、結婚時に夫又は妻の氏を選択して夫婦が同姓となる制度となっている。

これは、第二次世界大戦後に日本国憲法の個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、それまで妻は結婚によって夫の家に入り、夫の家の姓を名乗るとされていた夫婦の姓の制度を改正したものである。この制度は、夫と妻の姓を平等に選択する機会を与えている点で、形式的に見れば男女平等であるが、結果的に見ると男女平等とはなっていない。なぜなら、現在においても、98パーセント近くの夫婦が夫の姓を選択し、大部分の妻が結婚によって姓を改めることを余儀なくされているからである。

■別姓を求める動き

このような夫婦の姓のあり方に対し、女性の社会進出が進み、男女平等意識が高まるにつれて、不公平と感じる女性が増えるようになった。また、晩婚化が進む中で、結婚時に仕事を持っている女性が増え、それまで仕事で使っていた姓を変えると不便不利益であるとの声や、生まれたときから使っていた姓を変えることは苦痛であるとの声も高まってきた。

1980年代より女性たちによる選択的夫婦別姓制度を求める運動が少しずつ広がりを見せるようになった。

1985年に日本政府が女性差別撤廃条約を批准する際にも、条約違反ではないかとの指摘がなされていた。しかしながら、これらの議論や運動が法改正にはつながらなかった。

■法改正の動き

1991年に法務大臣の諮問機関である法制審議会が、夫婦の姓を中心とした民法改正の審議を開始した。5年間の審議の末、法務省は1996年2月に民法改正案要綱を公表した。この中で選択的夫婦別姓制度の導入が提案された。改正案ではこのほか、婚外子の相続分差別の撤廃(法定相続分を婚内子と平等とする)、男女の婚姻年齢の平等化(現在は男性18歳、女性16歳となっているのを18歳に統一)、女性の再婚禁止期間の短縮(現在の6ヶ月を100日とする)などが提案されている。改正案はこの年、政府案として国会に上程される予定であったが、自由民主党内に消極論が根強く、改正の方向でまとまらなかったために、見送りとなった。この後2001年に至るまで、毎年のように野党から議員立法として改正案が国会に出されているが成立には至っていない。

■反対論が強い理由

日本では明治時代の近代化の中で、富国強兵策の一環として、戸籍制度が完備された。戸籍制度は日本独特の「家制度」を形成し、そしてそれを包含した天皇と国民の関係も一つの大きな「家」ととらえる体制、意識を醸成した。姓も「家」をあらわすものとしてとらえられていたため、姓と家意識を結びつけてとらえる考え方が未だに根強い。従って、夫婦別姓に反対する人々があげる理由として最も大きいのは、別姓を認めると家族の一体感が弱まり、家族の崩壊につながる、というものである。ここには姓の同一性が夫婦、親子の結びつきを強めているとの先入観がある。しかしながら、この問題に関しては、男女、世代間で認識の違いが際立っており、若い女性たちを中心に、姓は個人のものとして、夫婦の自律に委ねるべきとの意見が強まっている。逆に反対意見は高齢者ほど割合が高くなる。

晩婚化、少子化現象が益々強まる中、若い人々の結婚観を尊重し、結婚の選択肢を少しでも増やしてゆくことは今後の日本社会にとって重要な問題である。

■通称使用の広がり

制度としての夫婦別姓が認められていないことから、結婚時に夫の姓を選択して結婚届を出しながらも、仕事上あるいは社会生活上は結婚前の旧姓を使い続ける通称使用が広がっている。サービス業など女性の多い企業においては通称使用を認めるところが増えており、地方自治体においても、職員の通称使用を認めるところが次々と出てきている。また、2001年10月からは国家公務員の通称使用を認める政府方針が出された。

このように通称使用は、日本の社会において定着しつつあるが、戸籍上の姓と社会生活上の姓と二重の姓を持つこととなるため、混乱が生じたり、あるいは通称使用を使える場面が限定されて一貫しなかったりで、限界があることも事実である。

婚姻届を出さないで事実婚で別姓を実践する夫婦も少しずつ増えてはいるが、子どもが婚外子として差別されたり、配偶者相続権がないなどの不利益が課される。

やはり、民法を改正して法制度上も別姓を選択できるようにすることが必要である。

■最近の動き

2001年5月に別姓についての世論調査が実施されたが、法改正に賛成する意見が増え、1996年の32.5パーセントから42.1パーセントに増加し、通称使用を認める意見とあわせると65.1パーセントが賛成派となった。

今後の情勢は予断を許さないが、自民党内がまとまれば、法改正につながっていく可能性も十分あり、国会のこれからの動きが注目される。

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吉岡睦子
1979年弁護士登録(東京弁護士会所属)著書 「結婚が変わる、家族が変わる」(日本評論社)、「日本の女性と人権」(明石書店)、「人は誰と生きるのか−家族をめぐる6章」(宝島社)、「親子のトラブルQ&A」(有斐閣)他。いずれも共著。

 


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Last Updated January 15 2002, ©2001 Women's Online Media 禁無断転載