
世界のワーキングウーマン事情
〜シンガポール編
1. 人々の働きぶりは、どんな感じか。
(就業時間、就業態度、職場環境)
就業時間:
夫の会社(製造業)では8:30AM〜5:45PM。シンガポールは車の台数を制限し交通渋滞を防ぐため重税を課しているため、庶民はよく整備された公共バスや電車、又はスクールバス同様巡回して従業員を拾ってくれるカンパニーバスで出勤する。
一般的に事務所では大体9:30〜10時始業、店舗ではデパートで10時、中小小売店では11時頃開店と、始業/終業時間にはかなりばらつきがある。土曜は半日出勤がまだ一般的。土曜の朝は平日と同じ感覚で、ウィークエンドということばを「土曜午後から日曜」という意味で使う人も多い。
残業を強制されるのは誰もが嫌うけれど、残業手当めあてや職業的野心から積極的にしたがる人もおり、人それぞれ。華人(中国系)はキアス気質といって、お金やモノを所有することにこだわる人が多く、マレー人はあくせくするより家族や楽しみを優先する人が多く、インド系は熱心に働くけれどそればかりが全てではないと考える人が多い、と見受けられるものの、これはあくまで一般論。個人差が非常に大きい。
ただ、家庭の夕食は夜8時から9時までで、この時間だけは家族そろってすごすことを大切にしている人が多い。そもそも家族皆で豊かに楽しく暮らすために仕事をしているのだから当然である。この時間、家に帰らせないような働かせ方は、家族をおろそかにする企業姿勢ととられ、尊敬されない。
就業態度:
民族差はあるものの、中国系をはじめ、個人のメンツは大変重要視される。当然、他人の前で叱責したり、日本的な発想で上司から部下に残業を命じたり、高飛車な態度で接したりするのは嫌われる。
街に出てみても、全体に働く人の態度は真面目で、長時間よく働く。しかし、日本のような無意味な(心にもない)愛想笑いをふりまくのが良いサービスであるとは必ずしも思われてない。
また、朝食・昼食・夕食といった発想もあまりなく、お腹がすいたらいつでも「マカン(マレー語で、食べる)タイム」。仕事中でもよくものを食べる。店に入ってもよく店員がレジで食事していたりする。(かなり洒落た店でも)日本人がこうした点でシンガポール流を「無愛想」「態度が悪い」と批判する声をよく聞くが、日本的論理を一方的に当てはめる態度には猛反省を促したい。
アジア的な時間のルーズさは確かに残っている。「ノー・プロブレム・ラー!」を連発されたら要注意。心配だからこそ大丈夫、大丈夫と言って安心させようとしているのである。しかし筆者は個人的に困ったことになったことはない。遅れそうな人からは、ポケベルか携帯電話の番号を聞いておき、遅れてもらっては困ることを強力にアピールしておく。遅れたら矢の催促をかける。と同時に、遅くてもいいから確実にできる時間で約束させる、という方法で大概は防止できる。要は甘く見られなければいいのだ。
とにかく仕事においても、家族に関することは常に、最優先事項である。家族が病気になったら医者に付き添うため会社を休むのは当然で、たとえ疑わしくても口に出すことは失礼だ。仕事だけの付き合いであっても、相手の家族の様子を尋ねるのは、せんさく好きなどではなく、家族への敬意を表わす礼儀正しい態度なのである。日本人はこのことをもっと知って配慮すべきだと思う。
2. 女性のキャリア・パスについて。
(女性管理職・専門職の割合)
高学歴女性は結婚と関わりなく働くのが当然である。大卒なら男女の別なく、最初から管理職待遇で雇用される。日英バイリンガルにもかかわらず、大卒でお茶汲みをし、今では夫の会社のために仕事もできず家にいる筆者などは、シンガポール人からみると信じられない無駄だ。学歴はカネのなる木。家事や育児などメイドに任せてガンガン働くのが当たり前だと思われている。高学歴女性には料理がまったくできず、覚えようとも思っていない人も多い。女が料理をしないと言っても誰も驚かない。
そんなに高学歴でない女性でも、働くのが当り前だ。結婚まではよりよい結婚のために、お洒落や社交にお金を使うし、結婚したら家の購入や、子どもを高学歴に育てる教育費のために働く。高給取りでない彼女らのベビーシッターは主に母親である。たいていの家は2.3世代が、広々した公営住宅で同居しているから、若い働く女性には家事をまったくしたことがない人も多い。男女による待遇の差はほとんどまったく見られない。
転職は男女とも非常に多く、高学歴ならよりよい労働条件や、さらなるキャリアアップの為、他の一般労働者なら主に給料面の向上を狙って職を移ることが多い。日本のように、うちの社風にあわせて数年教育してから登用…などとのんきな事を言っていると、あっさり見限られてしまう。そもそも社風などという没個性的なものに染まりたいとは誰も思っていないのだから当然である。
3. 結婚、出産後も働きやすい環境か。
(産休、育児休暇等の制度)
職場により様々。 だが日本のように職場復帰しても子どものことで気もそぞろ…というような人は見かけない。産みっ放しであとは母親やメイドに任せてしまうので、子どもが2,3人いてもまだまだ「女の子」っぽい雰囲気の人も多い。
4. 保育施設、保育制度について。
(保育の時間、方法、値段)
様々な種類の保育施設があり、お金に糸目をつけなければよりどりみどり。2才から預けられる幼稚園が多い。日本のようにお弁当を持たせる手間も不要、食事をさせ、おやつを出してくれる。長時間保育にも対応できるところがあり、朝から夕方まで預かってくれる。ただし希望にぴったりのところを探すには根気が要るし、至れり尽くせりの分、日本よりずっと高くつく。ある日本人女性の例をあげると、朝7:30〜夜6:30まで預け、朝昼ご飯とおやつ付きで月721Sドルかかるだそうだ。
平均給与が日本の三分の二〜半分ぐらいしかないシンガポールで、上のようなサービスを買うことのできる人は当然、限られている。そこで国民の大部分は、公営の保育施設「チャイルド・ケア・センター」を利用している。1995年末現在380のセンターがあり、郊外の公営住宅団地の場合、どの家からも近いところに計画的に配置されている。ここに子どもを預けて働く母親には、半日保育に75Sドル、一日保育に150Sドルの子育て補助金が支給される。
5. 男性の家事、育児への貢献度。
(家事、育児を分担する時間、方法)
男性だけでなく女性も、働く人たちは家事をあまりしない。食事はわずか数Sドルで外食できるので、家でまったく食事を作らない家庭も多い。共働きならたいていメイドを雇う余裕はあるので、同居の親かメイド、あるいはその両方が家事、育児を担当する。
ただ、英植民地だった影響か、男女同権でもレディー・ファースト。荷物を持つのも客に飲み物をつぐのも、ドアを開けて女性を通すのもここではすべて男性が先に立って行う。産婦人科はじめ妻が医者に行く時は必ず夫が同伴する。(仕事を休んででも同伴するのが当然と思われている。1人で行くと驚かれ、同情されるぐらいだ。)このへん、家事、育児に協力的な態度といえなくもない。
また、シンガポールでは皆大家族で育っているせいか、男性・女性問わず未婚のうちから赤ちゃんの扱いに慣れている人が多い。同居の兄や姉の子どもで慣れているのだろう。若い男性でも子どもの抱き方、あやし方はうまいものだ。育児に関しては男性も協力的、といっていいと思う。
6. 就労するのに必要な条件等。
(就労ビザ等の取得方法、取得条件)
労働ビザ(エンプロイメント・パス)は、シンガポールの会社に雇用が決まった人のみ申請できる。国にとって有益な人材と認められなければパスはおりない。すでに仕事である程度の実績をあげている高学歴者が望ましい。必要な書類はパスポート、卒業証明、資格証明、会社の推薦状、顔写真、申請用紙、整理カード、会社概要調査書など。
自分で事業を興して働く場合は、発起人二人、取締役二人が必要。この二つの役職は兼任できるので、実際には外国人一人、シンガポール人(又は永住権所持者)一人の二人いれば会社を興せる。株主が1Sドルずつ出し合って資本金2SドルあればOKである。(参照:「シンガポール、長期滞在者のための最新情報55」鈴木康子著、三修社刊)
7. その他
(ユニークな習慣、制度、等)
国際引越しの時、荷物にビデオカセットは絶対入れないでくれと運送業者に言われた。日本人の荷物からアダルトビデオが見つかるという、いわば前科がどうも何度もあるらしく、ビデオが入っているのを見つかると通関に非常に時間がかかるそうだ。「何でも禁止」で有名なシンガポールだが、当然?
ポルノも厳禁。日本からくる週刊誌もヌード写真のページはしっかり切り取られて店頭に並ぶ。絵や写真がなくてもポルノグラフィックな内容というだけで輸入が許可されない本があるぐらいだ。(もっともどの国にもウラはある。実際にはポルノも違法に流通している)
シンガポールあての荷物にわざわざ禁止されているアダルトビデオを入れるというのは、シンガポールの政府、国のきまりを馬鹿にしている態度と取られても仕方がないと思う。だからこそ国の威信にかけても厳しく対処されているのである。安易な行為で相手の国を侮辱する日本人の姿は情けない。中には独身男性あての荷物にふざけ半分でこういうものを入れる人もいるそうで、本人の知らぬうちに大騒ぎになる事さえあるそうだ。これを読まれる皆さんはどこの国を訪れるにしろ、相手の国の法制度や文化に敬意を払い、日本のやり方と違うからと言ってばかにしたり、文句をつけたりしないよう気をつけてほしい。他人の国に来させていただいているのだという謙虚な気持ちを忘れずに…
<シンガポールで働く日本人女性たち>
日本が就職超氷河期などと呼ばれる時代、働く女性が男女平等に扱われ、生活水準も高く安全・便利なシンガポールにやってきて職に就きたいと考える日本人女性は多い。今も数百人が働いているとみられる。単身者が1人で住めるようなアパートはほぼ皆無なので、何部屋もあるアパートの一室を借りて住む場合がほとんどだ。
給与は大体日本の3分の2から半分ぐらいである。生活費も安いから何とかやっていける程度。だから、お金を貯めることは期待できないと思ったほうがいい。むしろシンガポールにいる間に東南アジア各地を旅行したりして、日本ではできない経験を積むべきだろう。
ただ、日本人というだけでは、日系の人材派遣業者から日系企業に派遣され、シンガポール人女性社員がやらないお茶汲みやコピー取り、ワープロ打ちなど、日本と変わらない男性の補助的な仕事ぐらいしか見つからない。語学力はもちろんのこと、その上に何か専門分野に精通しているとか、特技があればもっと道が開ける。
<おわりに、個人的に思うこと>
シンガポールの日本女性は、会社のお金でプール付きの豪華なマンションに住み、日本語の新聞から自家用車まで支給されている日本企業の駐在員の妻たちと、シンガポール人と結婚した人や働く独身女性たちの間で、大きな断絶があるように感じる。駐在員やその家族は、自分の意志に反してやってきた人が多いからなのか、全体にシンガポールに溶け込む努力をしたがらない人が多いように見受けられる。何年住んでいても日系スーパーやデパートでしか買物をせず、現地の卵さえ食べずに日本から空輸される卵に行列をする始末である。駐在員の妻は就職したくても夫の会社に縛られて働けない場合が多く、時間を持て余して習い事やバーゲン通いなどで暇つぶしをしている。暇すぎるためかゴシップも実に盛んだ。
働く女性やシンガポール人と結婚した女性から見ると、こうした駐在員の妻たちの暮らしぶりは、時間とお金のあり余った優雅な奥様生活と見えるのだろう。彼女らは何となく冷ややかな目で駐在員の妻たちを見ているように感じる。駐在員の妻の中にも筆者のように奥様生活にはなじめない、働きたいと思っている人、空虚なゴシップなどに付き合っていられない!と奥様付き合いを避けている人もいるのだが…日本女性同士、できることならもっとヨコの連携を深め、働く人や駐在員の妻といった枠を超えてもっと仲間作りをしていきたい。それにはどうしたらいいのか、今考えているところである。
作者プロフィール
Izumiさん e-mail:pacificdolphin@earthling.net
シンガポール在住。日本企業で働く技術者の夫(ご主人も旦那さんも不可)の転勤で2年ほど前に来星。
シンガポールで日本語教師の職に内定するも、夫の会社の妨害で就職を断念。あまった時間を独学で一からパソコンに取り組み、1997年12月から当地の日本人女性、特に駐在員の妻を対象にした無料誌「Will」の紙面制作(デザイン、入力、レイアウト等)をオフィス97を使い一手に引き受けている。
現在は自分のホームページを立ち上げようとHTML言語を猛勉強中。毎年夏には、米国大学院のサマーMAプログラムで、外国語としての日本語教育学を勉強中。修士号を取得して次のキャリアに役立てるのが目標。
シンガポールでの日本人駐在員家族たちの生活、その問題点等に興味のある方は「Will」を発行している日本人女性のグループNetwork of Asian Womenまで。e-mail:nawomen@hotmail.com(日本語フォントに対応できない為、ローマ字でお願いします)
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Last updated on 3/27/98 by Shimada