
世界のワーキングウーマン事情
〜バンクーバー編(1)
1. 人々の働きぶりは、どんな感じか。
(就業時間、就業態度、職場環境)
一般的なサラリーマンの就業時間は通常9〜5時ですが、東海岸に本社のある企業や証 券会社、銀行は時差の関係で6〜3時です。土日は完全に休み、残業も職種によります
がほとんどしません。カナダは税金が非常に高いので、残業や休日出勤をしても税金 を取られるだけ損という考えと、残業や休日出勤なんて想像もできないという思考が
相まって、日本のように夜中までビルに煌々と明りがついているということは決して ありえません。
就業態度は概ね真面目です。日本のように、出勤したらまずお茶を飲んで新聞を読ん で、隣の人と昨晩のナイターの結果について話して…、とダラダラ働くことはなく、
席に着くと同時に仕事を始めます。集中力も格段に違います。残業、休日出勤なしの 前提ですから、9〜5時までわき目も振らずに働き、留守番電話、ファックス、電子メ
ールなどを駆使して会議も必要最小限にとどめます。
職場環境は職種によってまちまちですが、日本のような大部屋形式はほとんどなく、 小人数または個人のブースに区切られています。他人の声や電話に煩わされることが
ないので仕事に集中できます。しかし、その反面、仕事が個人個人の責任となるため 、担当者が休み、移動、転職した場合は混乱すること必至で、「自分の担当ではない
のでわからない」「自分の責任ではないから知らない」「聞いていない」「連絡を受 けていない」の嵐に必ず巻き込まれて、何度も嫌な思いをすることになります。
2. 女性のキャリア・パスについて。
(女性管理職・専門職の割合)
カナダは年齢、性別、人種、宗教、マリッジステータス(既婚、未婚、子持ちなど) などによって、職業を制限することは禁じられています。例えば、「30才までの男性
のみ」のような募集広告は違法で、会社側に提出する履歴書にも写真は勿論、年齢、 性別、人種、宗教などを書くことはありません。
女性だから差別されることはなく、女性管理職・専門職もたくさんいますが、とにか く能力と経験がすべてと言えるでしょう。それより、いくら高い能力と経験があって
も、カナダ経済の基盤が非常に弱いために就職口が少なく、やっと見つけた仕事も簡 単に解雇されてしまうことの方が問題です。失業率がなかなか低くならず、雇用創出
が難しいことが社会問題となっています。
3. 結婚、出産後も働きやすい環境か。
(産休、育児休暇等の制度)
出産には18週の休暇が認められており、その後、女性男性のどちらでも、さらに10週 間の育児休暇をとることができます。また、出産休暇に入る前に文書で出産後も現在
の職場に復帰する意志がある旨を表示しておくと、雇用主は出産後も同じポジション 、同じ給料を保証しなければなりません。さらに、養子を迎えた場合にも男女ともに
育児休暇が取れます。産休中は産休以前の給与の60%が保証されますが、これは州の 労働省から支払われます。会社側から何らかの手当が出る場合は、その分が差し引か
れますので、手元に残る金額は同じということになります。
北米の人の場合、体力的にも日本人とかなり違うようで、出産直前まで働き、休暇後 はただちに職場復帰するのが普通です。
4. 保育施設、保育制度について。
(保育の時間、方法、値段)
保育施設は少ないわけではありませんが、決して安くはありませんし設備もピンか らキリまでです。学校形式の大きなものから、自宅の一部を解放して5〜6人程度を預
かる所までさまざまです。通常は近くのコミュニティセンターなどで、複数のデイケ アセンターを紹介してくれますので、施設や環境などを自分で確かめて選びます。ま
た、ほとんどのデイケアで現在通っている家庭を教えてくれますので、直接その家か ら評判を聞くことができます。時間は両親の勤務時間に合わせてくれますが、朝7時
頃から夜の7時頃までの数時間が普通です。親が1日8時間週5日勤務の場合はCAN$500 〜700が相場で、この費用は年間$5000まで税控除の対象となります。
さらに、ある程度余裕のある家庭は、自宅にナニー(子守り)を住み込みで置いてい る場合もあります。住み込みのナニーは住居と食事が保証されているので、給料は小
遣い程度の金額となります。ほとんどのナニーは東洋系の女性で、フィリピン、タイ 、カンボジアなどから難民ビザで入って来た人のための就職口でもあります。
5. 男性の家事、育児への貢献度。
(家事、育児を分担する時間、方法)
女性もフルタイムで働いている以上、男性も家事を分担するのは当然で(例え嫌々な がらでも)、特に人件費が高いため、電気器具や家の修理、ペンキ塗り、プール掃除
、芝苅りは男性の仕事とされています。また、学校の隣にでも住んでいない限り、日 本のように子供が一人で登下校することは有りえず(非常に危険)、学校、友達の家
、お稽古ごと、スポーツクラブ、パーティなどなど、ある程度の年齢になるまでは、 すべて親が車で送り迎えすることが必要で、これが大変な負担となります。ただ、洗
濯は全自動と乾燥機で、食事は簡単に済ませてすべて食器洗い機にかけるなどように 、家事に余り時間をかけないので、男性も参加しやすいことも事実です。仕事が時間
どおり終わり時間外の無駄な付き合いがないことが、男性も家事、育児に参加できる ポイントではないでしょうか。子供の面倒を双方の実家の親にみてもらうという慣習
はあまりないようです。
6. 就労するのに必要な条件等。
(就労ビザ等の取得方法、取得条件)
就労に関してはアメリカや日本のように、ヤミで働くということは殆ど不可能と思わ れます。これはカナダが国民総背番号制を採用しているためです。働くためには、ワ
ーキングビザを取得するか、移民という方法で永住権をとるしかありませんが、30才 以下の日本人であれば、ワーキングホリデー制度を利用することもできます。ワーキ
ングビザは雇用主が州側に申請するものですから、現在雇われている所を辞める、ま たは解雇されれば、当然ビザも失効となります。
移民となるには、配偶者や親兄弟がカナダ人(移民も含めて)である、カナダで事業 を始める、カナダに投資する、などの他に、自己申請する方法があります。これは学
歴、職歴、年齢、職種、語学力、雇用先の有無などを点数制で評価していくもので、 特に現在カナダ政府が必要としている専門職の人が有利となります。自分で申請する
ことももちろん可能ですが、弁護士を使う人が多いようです。
7. その他
(ユニークな習慣、制度、等)
基本的に差別はないといっても、女性の給与は男性の70%程度という統計もあります し、法的なものも結局は男性が作ってきたものですから不備な点が多々あります。例
えば、離婚して一方が子供を引き取り、もう一方から毎月の養育費が支払われる場合 、支払われる養育費に関しては税金上の控除が認められるのに対し、受け取る側はこ
れが収入とみなされ所得税がかかる、といった具合です。これは、支払う側が男性、 受け取る側が女性となるケースがほとんですから、勢い女性側に不利な制度で、余り
に不公平ということで、近年やっと改正されましたが、この他にもまだまだ問題は山 積みといったところです。
こちらでは、実家の両親に子供の面倒をみて貰うという習慣が余りない代りに、コミ ュニティーで子供を育てるという意識が強いように思われます。特に別れてシングル
ペアレントになると、親の友達、子供の友達の親同士などで互いに預けたり、預かっ たりしながら、自分の子供と同じように育てます。子供のいない人も、友達の子供を
ご飯を食べに連れて行ったり、映画に誘ったり、一緒に買い物したり、気負わず自分 のできる範囲での協力を惜しみません。
また、会社側に人材を育てるという意識はまったくありませんから、就職1日目から 自分の専門の仕事を次々とこなしていかなければなりません。つまり、文学部出身の
人間が会社の研修でプログラマーになるということはありえないので、即、プログラ ムが組める人だけがプログラマーとして採用されます。そのため、実績のない新卒の
学生は就職口が非常に狭く、通常は夏休みなどに会社にボランティアとして無給で仕 事をさせて貰い経験を積みます。定期的な採用はないので応募する側が会社に履歴書
を送り、自分を売り込むことになります。
作者プロフィール
近藤 悦子さん。 1991年よりバンクーバー在住。日本では富士通、沖電気などで10年に渡りユーザーマ ニュアルの作成、編集を担当。バンクーバーでは新聞社、翻訳会社勤務のあと、現在
、フリーランスの翻訳、編集者として稼働中。
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Last updated on 2/4/98 by Shimada